2018/03

日高研卒業生のホルカ・イリナさん(京都大学人文科学研究所専任講師)が、初めての単著となる『島崎藤村 ひらかれるテクスト メディア・他者・ジェンダー』を勉誠出版から刊行しました。
大阪大学に提出した博士論文がもとになっていますが、奈良教育大学大学院での修士論文製作以来取り組んできた島崎藤村の研究をまとめたものです。
以下、出版社サイトより──。
島崎藤村の文学は、どう読まれてきたのか
新聞、雑誌、教科書など様々なメディアを通して広く読まれてきた島崎藤村。〈私的領域〉をモチーフとしながらも、ただの自伝や告白としてではなく、文学として昇華させることが目論まれたテクストは、社会の制度や通念に揺さぶりをかける、鋭い批評性を持っていた。
メディア・他者・ジェンダーをキーワードに、実生活と芸術、個人と社会、規範と逸脱が交錯する藤村文学を読み直し、そのダイナミズムを提示する。
------
ホルカ・イリナ HOLCA Irina著、勉誠出版、256頁、4,600円+税
『奈良教育大学国文─研究と教育』第41号が刊行されました。
>>全体の目次はこちら
本誌には、日高研究所属の院生、河津侑真くんと中嶋優隆くんの論文、および、龍谷大学の田口律男さんによる拙編著『谷崎潤一郎読本』の書評が掲載されています。
【論文】
◇河津侑真
試みとしての歴史小説─井伏鱒二「逃げて行く記録」─
◇中嶋優隆
佐藤春夫「指紋」における〈映画〉の可能性─附録「月かげ」の機能─
【書評】
◇田口律男
五味渕典嗣・日高佳紀編『谷崎潤一郎読本』
河津論は、昨年の国文学会研究発表大会での口頭発表をもとにした論文で、井伏が昭和初年代に初めて取り組んだ歴史小説の位置とその構想について論じたものです。
中嶋論は卒業論文を発展させた論文で、佐藤春夫の探偵小説的作品「指紋」を、単行本に収録される際に「附録」とされて併載された「月かげ」を補助線として読むことで、作中の〈映画〉の機能について構想したものです。二人とも、初めての論文になります。
また、田口律男さんの書評は、五味渕典嗣さんとの共編で2016年12月に刊行した谷崎論集にかんするものです。お忙しいなかのご執筆に心から感謝申し上げます。