2015/03
『奈良教育大学国文─研究と教育』第38号に拙論を発表しました。
〈狂気〉への回路─谷崎潤一郎「黒白」の読者と挿絵─
昨年夏にタイで開催された国際シンポジウムでのパネル発表(報告書に共著論文を発表済み>>こちら)を単独の論文に膨らませたもので、谷崎のモダニズム小説「黒白」の新聞連載時における挿絵の機能を考察した論考です。
同誌には、研究室卒業生の笹尾さんと、所属院生の益田くんの論文も掲載されています。
◇笹尾佳代
軽井沢モダンの諸相─菊池寛「陸の人魚」・阿部知二「山のホテルで」を中心に─
◇益田拓
明治四〇年前後における〈事実〉を描くレトリック─綱島梁川の「写実」から泉鏡花の「写生」へ─
笹尾論文は昨年6月の国文学会での発表をもとにした論考。避暑地・軽井沢の近代性を同時代の文脈と空間表象の方法から検討されています。
益田論文は、綱島梁川の「神を見た」とされる言説の様相を明らかにした上で、同時代に及ぼした影響関係を泉鏡花の表現実践に見ようという論考。益田くんにとって初めての論文になります。
『タイ国日本研究国際シンポジウム2014 論文報告書』に、同志社大学の西川貴子さんとの共著論文を発表しました。
モダン文化と小説の視覚化表象─新聞連載小説における挿絵と物語言説の検討から─
昨年8月26日にタイのチュラーロンコーン大学で開催されたシンポジウムでのパネル発表をまとめたものです(タイトルの副題を若干変更)。本文に付した要旨は以下の通り。
>>1920年代の新聞連載小説、佐藤春夫「更生記」および谷崎潤一郎「黒白」を取り上げ、両作品の挿絵が読書行為に与えた影響を考察した。「更生記」は、物語内容を相対化する挿絵の仕掛けによって精神分析学的視線を読者に促す作品であり、また、「黒白」は、読みを限定する挿絵の構造によって作中人物の幻惑に読者を巻き込んでいく作品である。以上、近代における〈狂気〉を扱った作品の検討を通して、虚構と現実を曖昧化する挿絵の機能に、視覚効果を中心としたモダン文化の一側面を捉えた。